スマホで三鬼と三郎

津山市立図書館で西東三鬼生誕120年を記念して開催された「三鬼と三郎」展(2020年8月1日~28日)のスマホ版にあたります。展示された240点の中から自選24作品をお借りし「スマホで“三鬼と三郎”」として自作解説を加え公開します。

津山市立図書館での展覧会は2017年に刊行された、ポストカード集『三鬼と三郎』(三鬼の俳句1 句に三郎の写真1点を両面に印刷したカードを80 枚をブリキの缶に入れ3 缶制作した作品集)がもとになっています。

1900年に生まれた三鬼と1950年生まれの三郎による見立ての楽しさを味わっていただけたら、と思います。写真をタップする(押す)と自作解説を読むことができます。

小脳を冷やし小さき魚をみる

鳥

水枕ガバリと寒い海がある

水

微熱ありきのふの猫と沖をみる

鳥

算術の少年しのび泣けり夏

自転車

緑蔭に三人の老婆わらへりき

野菜

兵隊がゆくまつ黒い汽車に乗り

昆虫

冷房の時計時計の時おなじ

看板

捕虜の国の星座美し捕虜眠る

クモの巣

雪の町魚の大小血を垂るる

鮮魚

中年や遠くみのれる夜の桃

飲食店

雄鶏や落葉の下に何もなき

落ち葉

死にし人とこの寒潮を見(おろ)しき

上空

炎天を遠く遠く来て豚の前

トラック荷台のブタ

狂女死ぬを待たれ南瓜の花盛り

案山子

鉄板に息やわらかき青蛙

カエル

父のごとき夏雲立てり津山なり

石垣

眼帯の内なる眼にも曼珠沙華

植物

薔薇に付け還暦の鼻うごめかす

花

秋の暮大魚の骨を海が引く

海

夏草の今も細道俳句の徒

植物

秋の夜の壁に見あかぬおさなき絵

子供の絵

広島や卵食ふ時口ひらく

割れたタマゴ

秋の蚊をつかみそこねし女の手

熊手

女の鼾高し馬鈴薯植えし夜は

畑